箏日記↓

1996年6月28日

1996年6月28日

前に阿東先生や中根先生に誉められたと書いて、一人で喜んでるんだけど、あれ、ちょっと違うみたい。
例えば、あの席で小田さんのことは誰も誉めない。なぜなら小田さんは「上手い人」であって、「今上手くなった人」ではないからなんだよね。今更わざわざ誉めるのは、かえって失礼な訳で……
公然と誉められるということは、とてもとても未熟なことなんですよ。
だけど、たとえ「あそこ間違えたね」であっても「出が遅れたよ」であっても、今の私には人に自分の存在を意識されたと言うこと自体、格段の進歩なんじゃないかと。ま、結局喜んでいるんだけどね。
やっぱり焦らず、驕らず。ですね。

1996年6月27日

1996年6月27日

楽譜がないのと、曲目がはっきり決まらないのとで、暇だもんだから、書いてばっかりいます。
今「子供のためのラプソディー」を聴きまくっています。聴きながら、曲のイメージとか、多分自分が弾くことになるのではないかと思われる部分の手法とか想像しているんだけど、聴けば聴くほどはまり込む曲で、更には聴けば聴くほど難しそう……と消え入りそうになります。
テープをずっと聴いていると、テープの通りにしか弾けなくなるんだけど、テープ抜きの段階に入ってしばらくすると弾けないところとか、イメージが湧かないところなんかが出てくる。
時間をあけてもう一度テープを聴くと、ふっと意味がわかったりすることもあるし、ああ、ここは少しリタルダンドているんだと再発見することもある。
まだまだ自分の感覚だけで、とか譜面を見ただけで曲想が掴めないです。悔しいことだらけです。

「こだまの詩」
尺八の音が切ないです。
音楽の中では歌が一番好きだけど、楽器の中では管楽器が好きです。肉声に近いからだと思う。だからこの曲のように尺八がいいメロディーラインを持ってると泣けてくるんです。やってみたいよー。
それと17絃の低くて太い音。たまらないですよ。
 「華紋」
二筝をやってみてるけど、やはり華になるパートはその分難しい訳で。それをやろうとするのは無謀な訳で。キャイーン。
久しぶりに生みの苦しみを味わっております。
育てて大きくすることが本当は一番大変なんだけど、まず生まなければ育てることもできないっす。……生めないかも。

****努力することです
 自分を信じることです
 そうですね、始めてしまったんですよね。

 我といふ人の心は唯一人
 我より外に知る人はなし

1996年6月26日

1996年6月26日

雨コンコンです。なかなか正しい梅雨してます。
今、「華紋」に挑戦中です。難しいけど、二筝やってみたいな。
そう言えば、尺八もやってみたいな。三絃も、17絃もやってみたいな。誰か教えてくれー。
定期演奏会で、古曲とか聴いていると、お筝らしいなあと、つくづく感心するんだけど、なんか自分の中では違和感があるんですよね。
どうしてかなと思ってて、気付いたこと。
私はお筝が好きというより、音楽が好きなだけなんじゃないかと言うこと。
だから、お筝でどんなことができるのか試しても見たい。洋楽の人とセッションするって、どんな感じなのかな。音楽そのものが好きな人で、いろんなことやってみたい人っていっぱいいると思う。
インターネットで探したいとは思っているんだけど、ホームページを作るところにさえ行っていないから。ンー、なんとかせねば。
林氏が、古曲は三絃があれば三絃に合わせて吹けばいいけど、新曲はどこに合わせていいか分からないと言っていた。そういえば、その辺深く考えたことがなかったけど、新曲と言うか、現代曲は自分でやって見て、各々のパートが独立していると思ったことがある。   伴奏というより、そんな言葉はないんだろうけど、共奏的な。それぞれが自分の立場を持っているから、ここ一番、私の音を聴いて、みたいなところがどこかしらにある。その代わり誰にも頼る訳には行かないと言うことだ。だから私は面白い。尺八にしたって決して添え物ではない。一緒に演奏していると感じられるからいいと思うんだけど。

1996年6月25日

1996年6月25日

「祭りの終わった日」って倉本総のテレビドラマがあったけど、今そういう気分。
ずっとお祭り続いていればいいのに。
子供の頃、秋祭りを楽しみにしてて。振り袖着せてもらって、夜店を見に行って、毎年壊れてしまうのが分かっているのに水飲み鳥を買ってもらってた。お店の灯りがキラキラしてて、知らない人が急に沢山歩いてて、少し恐いんだけど、ドキドキして楽しくて。
だけど、2日間のお祭りが終わった翌日、学校に行く時に見る夜店の後片付け。急に秋風が冷たく感じられて淋しかった。
今、そんな気分。

1996年6月24日

1996年6月24日

 定期演奏会終わりました。
前日から、やけに不安で。ドキドキしてた。会場に着いても、緊張したままで、なんか落ち着かないのです。どうにもならない。
1番「花の歌」
何を弾いているのか、わかんなくなっていた。
尺八との呼吸が合わない。惨め~。
2番「篝火」
尺八緊張で間がはずれた。もう、なんか調子狂って出のテンポがゆっくりのまんまで、どんどん遅くなっていくうちに、自分だけ出るとこ、全く手が動かなくなっちゃいました。尺八のせいにしちゃいけないと、立ち直ろうとした瞬間、小田さんいきなりスピードを上げて来た。そしたらめちゃめちゃ調子戻って、どんどんのった……しかし、その時すでに曲の4分の3は終わってた。
……もうだめ、みたいな。このあともう8曲も弾くなんて地獄のようだと思った。
ステージは、自分の音がよく聞こえる。客席はどの音も、まあよく聞こえること。ゲー!!だ。
もうこうなったら覚悟するしかない。
初心、初心、ダメ元。
3番「躍る」
少し力が抜けて。やっといつもの気分で弾けて、落ち着いた。
4番「螺鈿」
三村氏から「ゆっくりね、ゆっくりね」と言われて、考えすぎたというか、本当にゆっくりになってしまって、かえって間が取りにくい。
このまんまじゃ何とも切ない「螺鈿」になりそうだったけど、小田さん、やっぱりスピードを上げて来た。ありがたいね。
5番「流れ」デース!!
これは、曰く付きの曲になってしまいました。
尺八の矢部さんと、この曲のことがきっかけで喧嘩になったのです。彼は彼で、この曲に自信があったみたいで、おめえらなんかにやれんのかと。勿論、お酒の席でしたから、みんな酔っぱらっての話だけど、言われた私もキレた。
「私たちには私たちの「流れ」があるし、それは絶対面白いよ。聴いてもいないくせにガタガタ言うんじゃないよ!!」
そしたら彼、「ケッ、なんぼのもんじゃ」とばかにした。
くやしくて、くやしくてつい叫んでしまいました。
「もう出来た人とか、初めから出来る人は、出来るようになろうとして一生懸命がんばっている人間の気持ちがわかんないんだよ!」………これだけは理解してくれたみたいでしたけど。
んで、結局本番彼の尺八で演奏することになったのです。
さて、当日。
スピードのコントロールはまあまあいけたんだけど、後半、凄く好きで、楽譜なんか見てないあたり、音がすべって。ウワーッとか思うんだけど、止まれない。
なんか、坂道を転げ落ちるようにラストへ突入。でした。
6番「涙のトッカータ・シバの女王」
ジャーン!一筝の音がとれないよー。
間数が数えられないよー。
最後なんて、弾かないうちに終わっちゃったよー。
皆さん、ごめんなさい。
7番「編曲民謡調」
尺八が駆け足になってしまう部分、合同練習の時も言ったんだけど、やっぱりトットコトットコ速くなっちゃった。
でも2回ぐらいしか合わせてないのに、立派なもんでした。三村氏の17 絃、決まってた。  凄くよかった。
8番「EMOTION」
こちらは、始まる前に小田さんが「飛ばすよ」と言い出した。練習のとき、私の出のスピード上がらなくてみんなイライラしてたんです。そっかー、と思って出たら……。
終わったら小田さん、「あんなに速くすると思わなかったんだもの」……ごめん。
9番「妖精の踊り」
いやいや三村のお父さん、そんなに速くなくていいから。
テンポ戻すので必死でした。
10 番「鯱の城」
最後の最後で三村組としての本領が発揮されました。
終わりよければすべて良し。とは三村氏の言葉。
いやほんと、そう思ったよ。疲れきって。

####打ち上げの席上、阿東先生に目茶目茶誉められました。上手になったって。中根先生なんか「私、超えられました」って、ちょっとそれ、言い過ぎだし。
「頑張ってるゾ」だけは、本当に伝わったのかなって思ってる。
だけど阿東先生、さすがです。「流れ」で、私がスタッカートの手を抜いてやってる一ヶ所を気付かれていました。