1996年10月15日

1996年10月15日

ずっと心の中の葛藤というか、メンタルな部分を書き続けてきたけど、心理的変化を起こすべく、物理的な理由があった訳で。
今一番思い出すのは、練習のときは勿論のこと、本番でもなんでも女史の準備及び後片付けのすばやいこと。初めは、ただ驚いてウロウロしていましたけど、いつも申し訳ないんですよ。私がお筝一面片付けるかどうかという頃に女史は全員の譜面立てまで片付け始めているんですよね。調弦もこっちが半分ぐらいの頃には女史は終わってていつも待たせてしまう。チューナーも買ったけど、それだって、使いこなすまで一苦労。
その、作業のスピードアップが、本番で周囲に迷惑を掛けないための基本なんですね。周りへの気配り。勉強になりました。鍛えられましたね。
 調弦にしても、現場でもたもたしないために、譜面に必要事項、特に転調がある場合は綿密に書き込みを入れるようにしました。
結局その対応が一番必要とされるのは、「一等星」のステージなのです。時によっては、お客様の前で調弦したり、お筝を取り替えたりしなくてはいけない事もあるのです(というか、殆どの場合、そうなんです)。そこで、間違いは許されない訳で。
「一等星」では更にメンタルな部分も鍛えられましたね。
こちらの方が絶対的に大きい変化なんだけど、初期の頃女史に言われたんですよ。「あなたに足りないのは、あと度胸だけだよ」と。言われたって簡単につくものじゃないけど、ギャラの金額ではなく、例え100円だって、自分の演奏にお金を払おうとする人がいるということに対する責任感。最初はそのことに押しつぶされそうになった。
しかし、引き受けた以上そこから逃げ出すことはできないと自覚したとき、それに本気で応えようと思うようになったんですね。
ギャラを貰ったことによって、ノーギャラの舞台に対しても真摯な気持ちで向かえるようになった気がするのです。
聴いてる人に、どんなに小さくてもいいから印象を残したいと思うようになったんです。今までは、できれば人に聴かれないようにと人前で弾いてるときでさえ思っていました。それが、今は一人でも多くの人の足を止められたら、と思うようになったのです。
だから、より納得できる演奏にしたいのです。
そして、悩みも増える訳です。