見たこともない壁、山、嵐 Vol.3

全曲弾き終えれば、ライブは終わってしまいます。

終わってしまえば、あとはパーティーで盛り上がって。
みんな和気あいあいと楽しい時間を過ごして。

しかしそこから私の心身の苦痛は始まるわけです。

結局、左上の歯は全滅しました。歯医者に通い、高い治療代を払い、修復してもらうのに4ヶ月かかりました。

また、腕はマッサージでは治らず、整形外科で鍼治療をしてもらい、これは治るのに半年かかってしまいました。

体にこれほどダメージが来るのは、年齢のせいだけではなく、テクニックの基礎がないのも大きな原因だと思う。
誰かに習って、基礎練習をすれば少しは変わるかもしれないけど、どう転んでもたいしたことは出来ないんじゃないかな。
って思うと、なにをしたいのかさえあいまいになってきて。

基本的には、「習う」ことをせず、自分が思ったままを思うように追求することが楽しかったはずなのです。
でも、ライブを通して、「思うように」が形になっていないと自覚せざるを得ませんでした。そんなんで「人様」にきいてもらうなんて、重大な責任を感じます。
そんなことを考え込んでいて、しかも腕は痛いし、歯はガタガタだしで、実にへこむ材料しかなくなって、ついにお筝をやめようかなって思うようになりました。

とにかくすべてに自信を失ってしまいました。
今まで自分がやっていたことすべてに自信が持てなくなってしまった。
人より上手だとは思っていなかったとは思うけど、「自分」ってものがあったはずだった。今、それすらもなかったんじゃないかって思う。