演奏会

胡弓を聴いてきました

11月30日「高橋翠秋・胡弓の栞」の演奏会に行ってきました。
日吉君からの紹介です。

「胡弓」は邦楽をやっていても馴染みのない場合もあります。
今回も「高橋翠秋」さんという人物も知らなかったため、あらかじめインターネットで調べてみました。
まず、「女性だったのか~」とびっくり。
次に、その芸歴にびっくり。(詳しくはインターネットでどうぞ)

演奏曲のなかに、「男で地唄」のときにも演奏された「古道成寺」が含まれていて、しかも三弦が富山清琴氏とそれだけでもゴージャスなプログラムでした。

「黒髪」も、胡弓でというのは初めてでしたが、あの曲の持つ色香がしっとりと強調され、せつなさがぐんと身近になった気がします。

胡弓のなんたるかも知らない状態でしたが、実に自在で豊かで多種多様な表現方法を持っている楽器なんだとわかり、「目からうろこ」。

無知な私でも、次第に胡弓のもつ独特な世界観に引き込まれていきましたが、その中でも圧巻は最後の高橋翠秋さん作曲の「胡流絲彩々(こりゅういとさいさい)」。
ご本人が「私なりの胡弓の流れを彩る音の屏風絵を紡いでみました。」とプログラムに記載されたとおり、あでやかな音の変化、奏法の多様性には驚くばかりでした。
しかも曲の最後はいわゆるフェイドアウトなんです。
すーっと演奏が遠のいて行く中、幕が静かに下りてきたときには鳥肌がたちました。

お囃子の方も、なんかテレビで見たことがあるような・・・・・・?

なんにせよ、また新鮮な世界をのぞき見ることが出来ました。

 

 

 

男で地唄

昨日は、東京深川のお寺で、「男で地唄」を聴いてきました。

私にとっては、新鮮な驚きと感動に満ちた会でした。

まずは、「さむしろ」。これは故中井猛氏の追悼曲として。
知り合いとしては、澤村君と日吉君が出演していて、更にはお話をしたことはないけれど、村澤丈児君も入っての演奏の素晴らしさには感服しました。
しかし、それにも増して池上眞吾先生の三弦の音色にも心を奪われてしまいました。
必要なところで「音が立つ」と言う感じ。

私なんぞは、とやかく感想など言う耳など持っていないと思いますが、理屈ではなく、心奪われてしまうのはいたし方ありません。

また、長谷川慎氏による「野川流地唄三味線」と言うものについての講義があり、大変興味深く聞かせていただきました。

その講義の後、復元された明治時代の三味線3丁での演奏。
その音の野太さにとてつもない音の広がりを感じました。
撥も駒も普段拝見したことのないものでしたが、そこから出てくる音は、どこか人間くさいというか、「楽器」以上のものというか、自然体な感じがするのです。
曲も「早舟」(野川流三味線本手組歌中組)という初めて聴くもので、唄が15番まであるのです。その歌詞がおもしろい。
また、曲そのものが、なにもわからない私でも実に楽しいのです。
基本、三味線音楽なのはもちろんわかっていますが、時に琵琶のようであり、時に胡弓のようであり、時に現代音楽の音並びに聴こえてきます。ハイカラなんです。新鮮な感動をしました。

そのほか、ご当地ものとして「文月」。利根君も演奏していたという「古道成寺」。
プログラムに(聴く方の年齢を考えてか、字が大きくて見やすい)全歌詞が印刷されていて、曲の意味を考えながら、感じながら聴くので、ついに普段の「誰の演奏が」とか「あの人の技術が」という聴き方は吹っ飛んで、 ただひたすら「音楽」にのめりこんでしまいました。

それでも澤村君の泣かせてくれる唄や演奏のバランス、日吉君ののびやかで色っぽい唄やはぎれのよい手さばきは見逃さずに聴いて来れました。

大人の、日本音楽の、コンサートでした。

 

 

横浜栄区演奏会

今年から栄区の三曲会に参加しています。

先日11月3日は、栄区の秋の文化祭で演奏して来ました。
1曲は水野利彦さんの「編曲民謡調」で、これは懐かしい曲。

もう1曲が、沢井忠夫さんの「千鳥幻想」。
初めてです。
基本的に沢井曲はあまりやっていないのと、この曲は17絃とお筝1パート。本来は1対1で演奏するものなのでしょうが、私が17絃でお筝が8人という編成でした。

沢井さんの曲は、飲み込むのに苦労しました。
譜面の字面で判断するのは無理な気がしたので、結局CDを購入することにしたのですが、現在普通には売ってなくて、インターネットで探してもらいました。

聴いてみると、やはり譜面を見るだけでは想像しきれないものがありました。
独特な曲想だし、沢井一恵さんの17絃はきわめて個性的な演奏です。
あんな表現は、とてもできるようなレベルではないのですが、とりあえず、真似っこから。

低い音の押し手がたくさんあるため、椅子に座っている暇がありません。
仕方がないので、立ち立奏用の立奏台を作ってもらいました。

しかし、本番立ったままでの所作がいまひとつ決まらなかった気がします。
特に一の糸から17の糸までのテンポ通りのグリッサンドがうまくいかず、コケました。
途中ごまかしながら、2小節後復帰できましたが、冷や汗ものでした。
お筝も、一部間が取りにくかったらしく、ズレが出ましたが、なんとかクリアしました。
1対8で、良く頑張れたなと思います。

私は単独パートなのと、沢井曲のためか、「演奏」の前に「造る」作業が必要でした。
これは本当に楽しい。独特な世界を覗くことができました。

次回の演奏会は神奈川県の名流祭。
着物も、も少しきれいに着たいですぅ。

 

 

よいろの会を聴いて

10月2日、渋谷の伝承ホール。

2回目のコンサートです。

日吉君と澤村君はお友達なので、特に聴き入ってしまうのですが、圧巻でした。
前回も素晴らしかったのですが、確実に厚みを増していました。

日吉君のお筝。切れのいい弾きかたが気持ちよくて、とても惹かれました。
唄も透明感がありながら、良く通る気持ちのよい声。
声は、持って生まれたものですから、これはかないませんね。

澤村君の「さくら変奏曲」の2筝。見事なまでのアンサンブル。
1筝の日吉君が、たぶん完璧自由に羽ばたけていたんじゃないかと想像しています。
澤村君もやはり唄でこちらの心を引っ張ってくれました。
「磯千鳥」の後唄では、本当に泣かせてくれるのです。

彼らは今後、どれほどに大きくなっていくんでしょうか。
邦楽に、真摯に向き合う若者たちです。
頼もしいです。

 

利根英法君追悼演奏会を聴いて

昨日は、高円寺にあるスタジオKで、利根君の追悼演奏会を聴きに行ってきました。

進行の芦垣さん(芦垣皋盟氏)が「湿っぽくせず、明るく」とおっしゃるけど、やはりいろんな気持ちになりました。

利根君に最も近い位置にいた人たちの演奏会だからか、そして彼らの「思い」があるからか、演奏の音を聴きながら、また演奏するみんなを見ながら、昨日ほど利根君を思い浮かべた日はないなと思います。

特に「吼噦」は、以前利根君の演奏を聴いているので、目の前で石田真奈美さんが演奏しているのはわかってるんだけど、耳は利根君の音を追ってしまう。
「春の夜」も利根君の好きな曲だったと聞くと、利根君ならどう弾いたかなと、つい影を探してしまうんですね。

「残月」ではついに涙が出ました。

出演者はみんな本当に上手な方々ですが、そのための感動とはもひとつ違うと思います。

彼らの「思い」なんですね。

とても良い演奏会でした。