邦楽四重奏団プレイズ

昨日(1月22日)、すみだトリフォニーホールに、邦楽四重奏団のコンサートを聴きに行ってきました。
洋楽器とのコラボで、下山一二三さんという作曲家の作品の演奏。
邦楽四重奏団の演奏する曲は、私ににとって、かなりハードルの高いプログラムばかりですが、今回は洋楽器とのコラボだったので、また毛色が違って聴く耳も変わるかなと思って。
演奏前にプレトークの時間があるというので、早めに現地到着。

企画の山本和智さんと下山一二三さんによるトークでした。
下山さんと言う人を存じ上げなかったのですが、青森県弘前市のお生まれだということに興味をそそられました。
作曲活動中、能の勉強をされたり、大鼓のレッスンに通われたりと、邦楽にも造詣が深い方でした。
鼓も先生にプロにならないかと誘われたほどの腕前らしいのですが、「邦楽」という枠にはまることを敬遠し、作曲活動に戻られたとか。
とても魅力的な方でした。1930年生まれ。現在86歳。かくしゃくとしていらっしゃいました。

20分後、演奏開始。
・・・・・やはり難解・・・・
ちょっと困った・・・・・

プログラム4曲目に「レクイエム津軽」と言う曲があり、尺八、バリトン、チェロ、津軽三味線のコラボとあったので、ひとまずそこに目標を置いて。
2曲目、3曲目とレベルの高い曲が続きました。
そして、いよいよ4曲目「レクイエム津軽」。

下山氏自身の作詞でもあるので、一部ここに書いてみます。

雪。雪。雪。雪。 (ユギユギユギユギ)
ぼだらぼだらと降ってくる雪。(ぼだらぼだらとふってくるユギ)
のそのそと降る雪。(のそのそとふるユギ)
夜でも日中でも降ってくる雪。(バゲでもシルマでもふってくるユギ)
地蔵様の頭コも(ジンジョサマのアダマコも)

天守閣もやまも川も。(てんしゅかぐもやまもかわも)
雪。雪。雪。(ユギユギユギ)
俺の額さも雪ァ降る。(ワイのナヅキさもユギァふる)
雪の花コ。花コの雪コ。(ユギのはなコ はなコのユギコ)
雪。雪。雪。雪。(ユギユギユギユギ)

弘前サ生まれで、弘前で生長テ。(シロサギサマレデ シロサギでオガッテ)
今ァ 東京ネ居る津軽衆一人。(いまぁとうきょうニァいるツガルシュヒドリ)
寒ぐて、凍れるバテ、(サビぐて シバレルバテ) 
きれいだ津軽の(きれいだつがるの)
雪コ。(ユギコ)
思い出しているノセ。(おもいだしているノセ)

後略

()内は発音です。津軽弁です。
これを朗々と深いバリトンで謳いあげる。
「ゆき」ではないんです。「ゆぎ」でなければ、北国の雪ではないんです。
全編津軽弁。方言のもっている魅力というのか、魔力というのか。私自身北国生まれだから感じるのか。特別な響きです。
いつしか、あのふるさとのしんしんと降り積もる雪の中に埋もれている自分がいました。

プレトークのなかで、山本和智さんが、こんなこともおっしゃってました。
「メルヘン」と言う言葉について。(うろ覚えなので、正確ではないかもしれませんが)
メルヘンというのはドイツ語だそうで。
この「メルヘン」という言葉は、どの国の言葉にも翻訳できないというお話。
ドイツにある、ある深い(であろう)森の中に独りたたずんだ時、恐怖のあまりふと頭の中に浮かんだ光景のみを「メルヘン」といえるのだというのです。
そこでしか、その場所でしか味わえない事象。感覚。
代替はないのです。
「ゆぎ」とおんなじです。

声とことばと尺八とチェロと津軽三味線と。気づかないうちに「コラボ」として、私の中で一体化してたと思います。