若手三人組のライブ 於塩山

7月29日、田嶋謙一さん、澤村祐司さん、日吉章吾さんの三人による「古典の真髄への挑戦」と題した5箇所連続公演最終日として、山梨の塩山にて演奏会がありました。
長崎、福岡、山口、大阪は遠くて無理だったけど、最終日の山梨なら行けない距離じゃないね、と夫が言い出し、急遽聴きに行くことに。

会は夜なので、石和に宿をとり、半分は夏休み旅行も兼ねて。
まずはおいしいハム屋さんで昼食を食べ、ドイツビールを1杯あおり、途中、個性的なカフェに立ち寄り、コクのあるうまいコーヒーを飲み、宿に入って温泉に浸かり、夕食は塩山駅前の小さな食堂で馬刺しと馬のモツ煮の定食をいただき、サービスで山梨の桃までついて、と、まるで旅の完結に近い状態。でも、演奏会はこれから・・・・。

会場は、塩山にある旧高野家住宅、別名甘草屋敷(江戸時代に幕府に薬種として甘草を上納していたためついた別名)といわれている巨大な民家。

演奏された曲は、尾上の松、鶴の巣籠、虚空、千鳥、八重衣の5曲。

暑い夜でした。演奏者は本当に過酷を極めたと思います。なんせ、抜粋はしませんから、それぞれの演奏時間はとてつもなく長いわけで。しかもクーラーなんぞない中で、かれらは和服です。正しい姿ではあるけれど、辛くないわけはありません。

がんばりました。熱い、熱い演奏でした。
三人とも真に一生懸命だったと思います。

尺八は、全身全霊で呼吸をし、それをいかに丁寧に音にするものなのかを改めて見せ付けられた気がします。
お筝もあれだけの大曲になると、手の動きの細かさ、速さが尋常な状態ではありません。
お筝の幅は30センチ足らずですが、じっと見ていると、あまりにも手の動きが速くて、お筝が宇宙的に大きく感じてしまいます。
三弦に至っては、演奏者が汗だくな分、楽器も汗をかいているのだと思います。何度さわっても、ねじがいうことをきかなかったそうです。
そのうえ二人とも唄も歌っている訳で、こちらも全身全霊をかけての演奏。
真摯な演奏でした。

演奏そのものがどうだとか、冷静な感覚ではなく、瞬間瞬間の三人の思いや心情に呑みこまれ、演者と同じ感覚にさせられていく。場が一体化していくんですね。
いわゆる臨場感です。こちらの気持ちも絞り込まれていきます。演者と同じように揺れ、流れ、歌い、泣く。究極の一体感です。

それぞれ、演奏すればするほど更に高い目標を持つのだろうと思いますが、山梨の暑い夜、「今」の、「今日」の三人の熱い思いに圧倒されて、興奮で夜中になっても眠れませんでした。